レオカーナとは?仕組み・治療の流れ・注意点を臨床工学技士が解説

レオカーナ(吸着型血液浄化器)のイメージ画像 透析
レオカーナは閉塞性動脈硬化症による難治性潰瘍の治療に用いられる医療機器です

👨‍⚕️ 著者:臨床工学技士(国家資格)|登録:平成15年(2003年)|登録番号16,000番台|透析専従20年以上・1万症例以上|北海道内病院 透析室・急性期血液浄化担当

記事公開日:2026年7月 最終更新日:2026年7月

📌 本記事の信頼性について 本記事は臨床工学技士としての臨床経験と、公表されている電子添文(添付文書)・保険適用資料・査読済み論文の情報をもとに作成しています。実際の治療内容や適応の判断は、必ず主治医の指示のもとで行われるものであり、本記事は特定の治療方針を推奨するものではありません。

✅ この記事でわかること

  • レオカーナ(吸着型血液浄化器)とはどのような機器か、仕組みと保険適用の概要
  • どのような患者さんが治療の対象になるか
  • プライミングから体外循環、返血までの治療の流れ
  • 血圧低下や併用禁忌など、治療にあたって知っておきたい注意点

閉塞性動脈硬化症(ASO)による重症下肢虚血(CLTI)で、血行再建術が難しい、あるいは行っても潰瘍が改善しない患者さんは少なくありません。「レオカーナ」は、そうした患者さんに対する治療選択肢のひとつとして2021年に保険適用された吸着型血液浄化器です。

今回は、透析室で血液浄化療法に携わる臨床工学技士の立場から、レオカーナの基礎知識・治療手順・注意点を整理してご紹介します。


1. レオカーナとは

レオカーナ(Rheocarna)は、デキストラン硫酸及びL-トリプトファンを固定化したセルロースビーズ(平均粒径450μm、吸着体容量250mL)を用いた吸着型血液浄化器です。血液を直接この吸着体に灌流させることで、血液中の低密度リポ蛋白コレステロール(LDL-C)とフィブリノゲンを選択的に吸着除去します。

分類上はクラスⅢ(高度管理医療機器)にあたり、2020年8月に医療機器として承認、2021年3月1日付で保険適用されました。使用目的は「血行再建術が不適応又は不応答な閉塞性動脈硬化症における潰瘍の改善」です。

似た治療法に「リポソーバー」(血漿灌流法)がありますが、レオカーナは血液を直接灌流する方式(DHP:直接血液灌流)であり、専用の血漿分離器を必要としない分、回路構成がシンプルという特徴があります。また保険適用の対象患者も、リポソーバーが高脂血症を伴うフォンテイン分類Ⅱ〜Ⅳ度のASO患者であるのに対し、レオカーナは高脂血症の有無を問わずフォンテイン分類Ⅳ度のASO患者が対象という違いがあります。

2. 保険適用と診療報酬

レオカーナは特定保険医療材料区分「209 吸着式血液浄化用浄化器(閉塞性動脈硬化症用)」に該当し、償還価格は91,600円です。診療報酬上は「K616-8 吸着式潰瘍治療法(1日につき)1,680点」として算定され、回路の費用は別に算定できません。

算定にあたっては、次のいずれの要件も満たす必要があります。

  • フォンテイン分類Ⅳ度の症状を呈する患者であること
  • 膝窩動脈以下の閉塞又は広範な閉塞部位を有する等、外科的治療又は血管内治療が困難で、かつ従来の薬物療法では十分な効果を得られない患者であること

診療報酬明細書の摘要欄には、これらの要件を満たす医学的根拠を記載する必要があります。また実施回数は、原則として一連につき3ヶ月間に限り24回を限度として算定されます。

3. 対象となる患者

治療対象は、血行再建術が不適応または不応答な潰瘍を有するASO(フォンテイン分類Ⅳ度)患者です。「不適応・不応答」の判断基準としては、解剖学的な困難さ、血行再建術が手技的・臨床的に不成功であったこと、その他医学的に妥当な理由が挙げられます。

一方で、以下のような患者さんには慎重な適用、あるいは適用を避けるべきとされています。

  • ACE阻害薬服用中の患者(併用禁忌)
  • 抗凝固剤使用が禁忌である患者
  • 出血中、または出血傾向が疑われる患者
  • 重篤な心疾患、重篤な脳血管障害の患者
  • 管理困難な重症の高血圧・低血圧の患者
  • 体重40kg未満の患者
  • アレルギー性疾患を有する患者
  • 重症貧血、低フィブリノーゲン血症の患者

4. 治療の流れ(プライミング〜返血)

治療の大まかな流れは次のとおりです。

① プライミング(洗浄・充填) 

使用する抗凝固剤に応じてプライミング液を選択します。ヘパリンを使用する場合はヘパリン加生理食塩液(生食1,000mLにヘパリン2,000単位を添加)、フサンを使用する場合は生理食塩液(ヘパリン無添加)を用います。150mL/分程度の流速で1,000mL以上流し、回路内・本品内を洗浄・充填します。この際、流路から気泡を十分に除去することが重要です。

② 穿刺・体外循環開始 

穿刺は両腕穿刺を原則とし、シャントを有する患者では脱血・返血の穿刺部位をできる限り離します。2本の穿刺が完了したら、無脱血で体外循環を開始し、循環開始時刻を記録します。体外循環開始時の抗凝固剤は、原則ヘパリンをボーラスまたは回路へのワンショットで3,000単位投与します。

③ 治療開始 

回路内(脱血回路・本品・返血回路)が血液で満たされた時点を治療開始時刻として記録します。血液流量(QB)は初回開始時50mL/分以下から開始し、患者の状態を観察しながら段階的に上昇させ、最大流量は200mL/分とします。抗凝固剤はヘパリンであれば1時間あたり500〜1,500単位を持続投与、フサンであれば体外循環開始時より30〜40mg/hrで持続投与します。

④ 血圧モニタリング

 循環開始時刻から30分間は5分間隔、それ以降は15分間隔で血圧を測定します。血圧低下があれば血液流量を60mL/分以上に上げず、血圧上昇を確認したうえで段階的に上げていきます。

⑤ 返血・終了 

返血開始前にカラムの向きを反転させます(プライミング・体外循環時は青が上・赤が下、ラベルが正面向きとなるよう装着しますが、返血時は上下を逆にします)。治療終了後、脱血回路を外し、生理食塩液を流速50〜100mL/分で400mL流して回路及び本品内の血液を返血します。

治療時間は約2時間で、本品の血液入口圧と出口圧の差は150mmHg以内で管理し、これを超えた場合は治療を中止して血液流路内の血液を回収します。

5. 治療スケジュールの目安

治療は週2回(中1日以上空ける)を基本とし、12週間(24回)を1クールとします。潰瘍の治癒(滲出液がなく皮膚欠損がない状態)が確認された場合は、1クール終了前であっても治療を終了します。1クール終了後、治療を継続するかどうかは、創傷の専門医が潰瘍の状態を評価し、他の治療法の選択可否とあわせて判断します。

治療効果が期待できる場合、一定の間隔を空ければ次クールの算定が可能です(具体的な間隔は施設の運用・診療報酬の解釈により異なるため、事務部門・医師と確認してください)。

なお、維持透析患者にレオカーナを行う場合、同日に両方の治療を実施する施設も少なくありません。当院では午前中にレオカーナを行い、昼食休憩を挟んでから維持透析を行うことが多く、1日のスケジュールの中で無理なく両方の治療を組み込めています。ただし同日実施の場合、算定区分(DHPの手技点数が別途算定できるかどうか)は施設ごとに解釈が分かれる可能性があるため、事前に確認しておくことをおすすめします。

6. 押さえておきたい注意事項

ACE阻害薬との併用禁忌

レオカーナの吸着体(デキストラン硫酸)は、血液と接触すると血液凝固の接触相を活性化し、血管拡張物質であるブラジキニンを産生します。ACE阻害薬を服用している患者さんはブラジキニンの分解が抑制されるため、血圧低下や紅潮、嘔気、呼吸困難などのショック症状を起こすことがあり、併用禁忌とされています。休薬期間は腎機能数値にかかわらず1ヶ月以上が目安とされます。ARB(アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬)やARNI(アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬)についても、治療後の服用に切り替えるなど注意が必要です。

ACE阻害薬非服用でも起こりうる血圧低下

ACE阻害薬を服用していない患者さんでも、ブラジキニンの産生量自体が多ければ血圧低下が生じることがあります。治療開始後15〜30分は血圧低下の好発時間帯とされ、特に注意した観察が必要です。血圧低下時は下肢挙上や補液で対応しますが、補液を行う際は血液ポンプを一旦停止し、脱血側から行うことで、ブラジキニン産生後の血液がそのまま体内に入ることを避けます。

抗凝固剤の選択(ヘパリンとフサン)

抗凝固剤には原則ヘパリンが用いられますが、血圧低下や出血傾向、回路内凝固などの理由でフサン(ナファモスタットメシル酸塩)に変更されることもあります。実際の臨床報告でも、体外循環中の症状を伴う血圧低下や、ヘパリン増量でも改善しない回路内凝固が、抗凝固剤をヘパリンからフサンへ変更することで解消した症例が報告されています(Imai E, et al. Ther Apher Dial. 2023)DOI: 10.1111/1744-9987.14049。同論文では、フサンへの変更が治療効果そのものに影響するかどうかは今後の検証課題とされています。

空気塞栓・回路内凝固への注意

治療中は空気塞栓を生じさせないよう注意し、原則として体外循環を止めずに行います。やむを得ず停止する場合は血液回路内での凝固に十分注意し、速やかに再開します。カラム内残血・凝固、血液回路内凝固は血液浄化療法における一般的な不具合として一定の頻度で起こり得るとされています。

治療当日の処置について

抗凝固剤を使用する治療のため、治療当日は趾切断・抜歯・デブリードメントなど出血を伴う処置は可能な限り避けることが望ましいとされています。

7. よくある質問

Q
レオカーナは何回くらい受ける治療ですか?
A

週2回、12週間(24回)を1クールとするのが基本です。ただし途中で潰瘍が治癒すれば、1クール終了前でも治療を終了します。

Q
治療中はどのくらい血圧が下がりますか?
A

個人差が大きく、症状を伴わない軽度の低下から、嘔気などの症状を伴う低下まで様々です。特に治療開始後15〜30分は血圧低下が起こりやすいとされ、こまめな血圧測定が行われます。

Q
ヘパリンとフサン、どちらが良いのですか?
A

一律に優劣があるわけではなく、出血傾向の有無や血圧低下・回路内凝固の状況などを踏まえて主治医が判断します。フサンへの変更で症状が改善した報告もありますが、全ての患者さんに当てはまるわけではありません。

Q
リポソーバーとは何が違うのですか?
A

本記事は、公表されている電子添文・保険適用資料および文献情報をもとに作成した一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の治療方針を推奨するものではありません。治療の適応や実施内容については、必ず主治医・担当の医療従事者にご相談ください。

8. 免責事項

本記事は、公表されている電子添文・保険適用資料および文献情報をもとに作成した一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の治療方針を推奨するものではありません。治療の適応や実施内容については、必ず主治医・担当の医療従事者にご相談ください。

9. 参考文献

  1. 株式会社カネカ、株式会社カネカメディックス.レオカーナ 添付文書(2022年3月改訂 第2版).
  2. 株式会社カネカ.吸着型血液浄化器レオカーナ 保険適用リーフレット(2024年5月).
  3. 一般社団法人日本フットケア・足病医学会.閉塞性動脈硬化症の潰瘍治療における吸着型血液浄化器に関する適正使用指針 第1版(2021年2月).
  4. Imai E, Kaneko S, Hoshimoto A, et al. Short term-efficacy and tolerability of Rheocarna, a novel direct hemoperfusion adsorptive column, for chronic limb-threatening ischemia in dialysis patients: A single-center case series. Ther Apher Dial. 2023;27(6):1010-1016. DOI: 10.1111/1744-9987.14049

本記事はPubMed(米国国立医学図書館)に収載された文献情報を参照して作成しています。

執筆者プロフィール

臨床工学技士(国家資格)。平成15年(2003年)登録、登録番号16,000番台。透析専従20年以上、症例数1万例以上。北海道内の病院で透析室・急性期血液浄化業務に従事。当ブログでは臨床現場での経験と最新知見をもとに、透析・血液浄化療法に関する情報を発信しています。

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