レオカーナ導入時に役立つ、スタッフ向けマニュアル作成ガイド

マニュアル作成のイメージ画像 透析
新規医療機器のマニュアル作成には、複数の資料の統合が必要です

👨‍⚕️ 著者:臨床工学技士(国家資格)|登録:平成15年(2003年)|登録番号16,000番台|透析専従20年以上・1万症例以上

記事公開日:2026年7月 最終更新日:2026年7月

📌 本記事について 本記事は、新規医療機器を導入する際のマニュアル作成の考え方・進め方を一般化してまとめたものです。特定の医療機関や個人の運用内容を示すものではなく、レオカーナを例にした「マニュアル作成の型」の紹介を目的としています。

✅ この記事でわかること

  • 新規医療機器のマニュアルを作る際、どんな資料を集めればよいか
  • マニュアルに入れるべき項目の骨格
  • 添付文書・メーカー資料と、現場の運用ルールをどう切り分けて書くか
  • 完成後の運用・更新の考え方

新しい医療機器を導入するとき、現場で最初に必要になるのが「スタッフ向けマニュアル」です。レオカーナのように保険適用されて間もない機器の場合、参考になる院内資料がまだ少なく、ゼロから作ることも少なくありません。

今回は、レオカーナのマニュアルを作成した経験をもとに、新規医療機器のマニュアル作成の進め方を一般化してご紹介します。個別の医療機関や個人が特定される内容は含めていません。


1. マニュアル作成の前に集めておきたい資料

マニュアル作成の第一歩は、情報源を集めることです。レオカーナのような医療機器の場合、少なくとも次の3種類の資料は手元に揃えておくと、抜け漏れの少ないマニュアルになります。

  • 電子添文(添付文書):適応、禁忌、使用方法、有害事象など、法的にも根拠となる基本情報
  • メーカーのトレーニング用資料:添付文書には書かれていない、実務的な操作手順や運用上のコツが載っていることが多い
  • 関連学会の適正使用指針:適応判断の基準や、施設・医師の体制についての要件がまとまっている

これらはそれぞれ書かれている目的が違うため、内容が重複していたり、逆に片方にしか書かれていない情報があったりします。マニュアルを作る際は、まずこの3種類を並べて読み比べ、「どの資料にどの情報が載っているか」を整理しておくと後の作業がスムーズです。

2. マニュアルの骨格(章立て)

情報を集めたら、次は章立てです。レオカーナのマニュアルでは、次のような構成にしました。

  1. 製品について(概要・原理)
  2. 保険適用・診療報酬
  3. 準備物品
  4. プライミング手順
  5. 治療手順(体外循環〜返血)
  6. 併用禁忌・注意事項
  7. 主な不具合・有害事象
  8. 運用上の注意点(部門システムの操作など)
  9. 実施記録について
  10. チェックリスト(タイミング別)

ポイントは、「知識」(1〜2、6〜7)と「手順」(3〜5)、「運用」(8〜9)を章として分けておくことです。知識と手順が混在していると、実際に治療を行うときに必要な情報を探しにくくなります。

3. 「公式情報」と「現場の運用ルール」を分けて書く

マニュアル作成で最も悩ましいのが、添付文書に書かれていない「現場の運用ルール」をどう扱うかです。例えば、

  • カラムの取り付け方向に関する現場のルール
  • 血圧測定の間隔についての、より具体的な運用
  • 抗凝固剤の選択に関する、現場での使い分けの考え方

といった情報は、添付文書には明記されていないことが多いですが、実際の治療では重要な情報です。

こうした情報は、添付文書由来の内容と混ぜて書くと「どれが公式な情報で、どれが現場のルールなのか」が分からなくなり、後で読む人が混乱します。マニュアル内では、

  • 添付文書・公式資料由来の内容は本文中にそのまま記載する
  • 現場の運用ルールは、枠で囲む・見出しを付けるなどして視覚的に区別する

という書き分けをしておくと、後から見直すときにも「これは公式のルールなのか、施設独自の運用なのか」がひと目でわかります。

4. 手順は「時系列」で書くと使いやすい

治療手順のような実務的な章は、実際に行う順番どおりに書くのが基本です。当たり前のようですが、複数の資料から情報を集めていると、つい「添付文書の記載順」や「重要度順」で書いてしまい、実際の作業順とズレることがあります。

レオカーナの場合であれば、

  1. プライミング
  2. 穿刺・体外循環開始(時刻の記録を含む)
  3. 血圧モニタリング
  4. 返血・終了

という流れに沿って書くことで、スタッフが治療の現場でそのまま読み進められる構成になります。「①②③…」のように番号を振っておくと、途中で手順を見失ったときにも戻りやすくなります。

5. 注意事項は「なぜそうするのか」も添える

禁忌や注意事項は、「〜してはいけない」という結論だけを書くよりも、簡潔に理由を添えたほうが記憶に残りやすく、応用も効きます。

例えば「ACE阻害薬服用中の患者には使用しない」という一文だけでなく、「なぜブラジキニンという物質が関係しているのか」という機序を一言添えることで、似たような状況(例えば別の吸着型の医療機器を使うとき)にも応用できる知識になります。

もちろんマニュアル本文を機序の説明で長くしすぎると読みにくくなるため、詳しい機序は別記事やコラムに切り出し、マニュアル本体には要点だけを残す、という工夫も有効です。

6. チェックリストは「タイミング別」に分けると実用的

マニュアルの最後にチェックリストを置くのは定番ですが、項目を並べる順番にも工夫の余地があります。「治療前に確認すること」と「治療中に確認すること」「治療後に確認すること」が一つのリストに混在していると、実際に使う際に「今どの項目を見ればいいのか」が分かりにくくなります。

タイミングごとに見出しを分けておくと、

  • 治療前(事前準備)
  • 穿刺・治療開始時
  • 治療中
  • 返血・治療終了後

というように、今まさに行っている作業に対応した項目だけを見ればよくなり、実用性が高まります。

7. 完成後の運用・更新の考え方

マニュアルは一度作って終わりではありません。特に新規機器の場合、運用しながら気づいた点(血圧の下がり方の傾向、抗凝固剤の使い分けの実感など)を、随時反映していくことが望ましいです。

その際は、

  • 誰が・いつ更新したかがわかるようにする
  • 公式情報(添付文書等)が改訂された場合は、その都度マニュアルも見直す
  • 現場の気づきを反映する際は、個人や患者が特定されないよう匿名化・一般化してから記載する

という点に気をつけると、長く使えるマニュアルに育っていきます。

8. よくある質問

Q
マニュアルはどのくらいのボリュームが適切ですか?
A

一概には言えませんが、実際に治療の現場で開いて確認できる程度の長さが目安です。詳細な機序解説や治験データなどは、必要に応じて別資料・別記事に分けるのも一つの方法です。

Q
現場の運用ルールは誰が判断して決めるのですか? 
A

医療機器の使用に関わる運用ルールは、医師の指示・施設の方針に基づいて決定されるべき事項です。臨床工学技士など医療機器を扱う専門職は、その運用を安全かつ効率的にマニュアル化する役割を担います。

Q
他院のマニュアルをそのまま使ってもよいですか?
A

添付文書由来の内容は共通して使えますが、運用ルールの部分は施設ごとの体制(人員、システム、算定方法など)に依存するため、そのまま流用すると実情に合わない可能性があります。骨格は参考にしつつ、自施設の状況に合わせて調整することをおすすめします。

⚠️ 免責事項

本記事は、医療機器のマニュアル作成における一般的な考え方を紹介するものであり、特定の医療機関・個人の運用内容を示すものではありません。実際のマニュアル作成・運用にあたっては、各施設の方針および関連法令・添付文書・適正使用指針に従ってください。

執筆者プロフィール

臨床工学技士(国家資格)。平成15年(2003年)登録、登録番号16,000番台。透析専従20年以上、症例数1万例以上。ブログでは臨床現場での経験と最新知見をもとに、透析・血液浄化療法に関する情報を発信しています。

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