エムラクリームで透析穿刺痛を減らす|正しい塗り方と角度をCEが解説

エムラクリームで透析穿刺痛を減らす 透析
エムラクリームで透析穿刺痛を減らす

👨‍⚕️ 執筆者プロフィール
臨床工学技士(国家資格)|登録年:平成15年(2003年)|登録番号:16,000番台
透析専従歴20年以上・担当症例1万件以上|北海道内急性期病院 透析室・急性期血液浄化担当

公開日:2026年6月最終更新日:2026年6月


📌 信頼性について
本記事は、PubMed収載の査読済み論文(RCT含む)に基づき、現役臨床工学技士(透析専従20年以上)が執筆しています。エムラクリームの使用・穿刺技術については、必ず担当医・担当スタッフの指示に従ってください。


この記事でわかること

  • エムラクリームとペンレステープの違いと選び方
  • エムラクリームの正しい塗布量・塗布時間・手順(文献根拠あり)
  • 穿刺角度・皮膚テンション法の実践テクニック
  • 冷却法(クライオセラピー)との効果比較
  • 副作用(接触性皮膚炎・G6PD禁忌)と代替ケア
  • 透析クリニックの選び方とエコーガイド穿刺の有無

透析穿刺が痛い原因とは?

太い針が引き起こす物理的な痛み

透析で使用する穿刺針は15〜17G(外径約1.4〜1.8mm)が標準で、一般的な採血針(22〜23G)と比べて格段に太い針を使用します。この太さが皮膚・皮下組織・血管壁に与えるダメージが穿刺痛の主因です。週3回・年間150回以上の穿刺が積み重なると、穿刺部位の皮膚が硬くなり、痛みが慢性化しやすくなります。

臨床工学技士の視点

20年以上の現場で感じてきたのは、「針の太さそのものより、皮膚を通過する際の抵抗感と速度」が痛みの強さを左右するという実感です。針先が鋭利なほど、同じ力でもスムーズに入るため痛みが少ない——これは患者さんの声とも一致しています。

予期不安が痛みを増幅させるメカニズム

「また痛いだろう」という予期不安が交感神経を活性化させ、血管収縮・筋緊張を引き起こして痛みがさらに強まるという悪循環が生じます。局所麻酔薬はこの予期不安の緩和にも寄与します。


エムラクリームの効果:文献エビデンス

PubMedに収載された査読済み論文(RCT)複数が、エムラクリームのAVF穿刺痛軽減効果を示しています。

主な根拠論文(PubMedより)

研究デザイン主要結果
Fujimoto K et al. PLoS ONE 2020(PMID 32210455多施設RCT・クロスオーバー n=66EMRAはペンレステープより VAS 10.1mm有意に改善(p=0.00001)
Shaheen S et al. J Vasc Access 2023(PMID 36573703RCT・クロスオーバー n=32ピロキシカムゲルより疼痛スコア有意に低下(3.56 vs 2.14ポイント低下、p=0.001)
Çelik G et al. Int J Med Sci 2011(PMID 22022215RCT・クロスオーバー n=41EMLA群はコントロール・プラセボより有意に低いVASスコア(p<0.05)
Al-Jubouri MB et al. Hemodial Int 2024(PMID 38605472多施設RCT n=1,041EMLA群VAS 45.0 vs コントロール群69.7。アイスパック群(39.8)がEMLAを上回る結果も

※Based on articles retrieved from PubMed

結論として:エムラクリームは複数のRCTで穿刺痛を有意に軽減することが示されています。ただし、アイスパック(クライオセラピー)が同等以上の効果を示す研究もあり、使用できない場合の代替として冷却法も有力な選択肢です(後述)。


エムラクリームの正しい使い方

ペンレステープとの違い

比較項目エムラクリームペンレステープ
剤形クリームテープ
有効成分リドカイン+プロピトカインリドカイン
麻酔深度深部(最大3mm)まで有効比較的浅い
塗布時間60〜120分前60分前(30分でも可)
使いやすさラップ/テープで密封が必要貼るだけ
向いているケース深い穿刺・皮膚が薄い方表面の痛みが主な方

Fujimoto et al. (2020, PLoS ONE) の日本の多施設RCT(n=66)では、EMRAはペンレステープよりVAS 10.1mm有意に改善(p=0.00001)することが示されており、深部まで麻酔をかけたい場合はエムラクリームが優れています。

正しい塗布量・塗布時間・手順

塗布量:1穿刺点あたり約2g(1〜2cm厚のこんもりとした量)

薄く伸ばすと麻酔深度が不十分になるため、こんもりと乗せることが最重要です。

手順:

  1. 穿刺予定部位の皮膚を清潔にする
  2. クリームを約2gこんもりと乗せる(伸ばさない)
  3. サランラップまたは付属フィルムで密封する
  4. 穿刺60〜120分前に塗布する(添付文書準拠)
  5. 穿刺直前にクリームを拭き取り、通常通り消毒する

臨床工学技士の視点

患者さんから「薄く伸ばしていた」という話をよく聞きます。こんもりと乗せて密封することが最大の効果を引き出すコツです。正しい塗り方に変えてからVAS痛みスコアが大幅に改善した患者さんを複数経験しています。


穿刺角度・皮膚テンション法

穿刺角度の考え方

穿刺角度は15〜30度が一般的な推奨範囲です。角度が急すぎると(45度以上)血管後壁穿通のリスクが上がり、浅すぎると(10度以下)皮膚抵抗が増して痛みが強まります。血管の走行・深さ・患者個別の解剖を確認した上で最適角度を選択することが重要で、一律「30度が正解」という単純な話ではありません。

皮膚をピンと張るテクニック

穿刺時に非利き手で穿刺部位の皮膚をピンと張ることで、針先のブレが減少し摩擦抵抗が下がります。特に皮膚が弛んだ高齢患者や、長年の穿刺で皮膚が厚くなっている部位で効果的です。エムラクリームで痛覚が鈍化した状態とこの皮膚テンション法の組み合わせが相乗効果を生みます。

実体験から

エコーガイドを活用することで、血管の走行・深さ・角度をリアルタイムで確認した上で穿刺できます。当院では難穿刺症例でのエコー活用が日常化しており、「1回で決める」ことが患者さんの痛み軽減に直結しています。


穿刺失敗時の対応策

シングルニードル透析の活用

穿刺失敗が続く場合や血管が細い方には、1本の針で透析を完結させるシングルニードル透析が選択肢になります。穿刺回数を減らして痛みと血管ダメージを最小化できますが、透析効率がやや低下するため主治医と十分に相談の上で適応を検討してください。

穿刺ミス後の「再塗布→シングルニードル待機」プロトコール

穿刺に失敗した直後に再穿刺を行うと、患者さんに不快感・不信感を与えやすく、痛みも蓄積します。以下は当院で実際に運用しているプロトコールです。

実体験から

患者さんの同意が取れた場合、穿刺ミスの直後に再穿刺せず、エムラクリームを再塗布してから30〜60分待機した後に再穿刺するようにしています。待機中はシングルニードルで透析を施行します。

以前は失敗直後に再穿刺することが多く、患者さんへ不快な思いをさせる場面が少なくありませんでした。本プロトコール導入後は患者さんから好評で、精神的な安心感にもつながっています。

ただし、シングルニードルで透析を行うためその日の透析効率は低下します。採血データを確認し、効率が必要と判断した場合は透析時間の延長も提案します。特に血清カリウム(K)が高い患者さんは要注意で、必要に応じて追加検査を行い、延長の可否を判断しています。

このような対応は施設・患者ごとの状況によって異なります。実施にあたっては担当医・スタッフとの事前の合意形成が前提です。


代替ケア:冷却法(クライオセラピー)

Al-Jubouri et al. (2024, Hemodial Int, n=1,041) の多施設RCTでは、アイスパックのVAS(39.8)がEMLA(45.0)を上回る疼痛軽減効果を示しました。Kortobi et al. (2020, Saudi J Kidney Dis Transpl, PMID 32655046) の前向き介入研究(非RCT)でも、クライオセラピーがEMLAより有意に高い疼痛軽減効果(p=0.001)を示しています。

エムラクリームが使用できない場合の代替:

  • 冷却法(アイスパック):穿刺直前に保冷剤をタオル越しに15〜30秒当てる。安価で即効性あり。文献上はEMLA同等以上の効果
  • ペンレステープへの切り替え:プロピトカインアレルギーの場合に有効(リドカイン単剤)
  • 振動刺激(ゲートコントロール理論応用):施設により導入状況が異なる

副作用と使用禁忌

接触性皮膚炎のリスク

エムラクリームの最も多い副作用は接触性皮膚炎(発赤・かゆみ・腫れ)です。PubMedに収載されたケースレポート(Pérez-Pérez et al., Dermatitis 2006、PMID 16956458)では、透析患者が週3回の使用で接触性皮膚炎を発症し、プロピトカインへのパッチテスト陽性が確認されています。塗布部位に強い発赤・水疱・かゆみが出た場合は直ちに使用を中止し、担当スタッフに報告してください。

G6PD欠損症の使用禁忌

G6PD(グルコース-6-リン酸脱水素酵素)欠損症の方はエムラクリームが禁忌です。プロピトカインの代謝産物がメトヘモグロビン血症を引き起こすリスクがあります(エムラクリーム添付文書 禁忌の項)。日本人では比較的まれですが、海外にルーツを持つ患者さんでは確認が必要です。


透析クリニックの選び方

エコーガイド穿刺の有無

エコーガイド穿刺は血管が細い・深い症例でも穿刺精度が大幅に向上し、失敗による痛みを減らせます。施設問い合わせ時に「エコーガイド穿刺に対応していますか?」と確認することが、施設を見分けるひとつの指標になります。

👉 エコーガイド穿刺の詳細は透析穿刺|エコーで針先を見失わない短軸法3ステップもご参照ください。

局所麻酔薬導入への姿勢とスタッフ体制

「エムラクリームを使ってもいいですか?」と問い合わせたときの対応が施設選びの判断材料になります。また、スタッフの技術研修体制・経験年数、日本透析医学会の認定施設かどうかも参考になります(日本透析医学会 認定施設一覧)。


よくある質問(FAQ)

Q
エムラクリームはいつ塗れば効果がありますか?
A

添付文書に基づく標準は穿刺60〜120分前です。個人差もあるため担当スタッフと最適な時間を相談してください。

Q
ペンレステープとエムラクリーム、どちらが効果的ですか?
A

日本の多施設RCT(Fujimoto et al. 2020、n=66)でEMRAがペンレステープより有意に優れていることが示されています。ただし使いやすさはペンレステープが上なので、患者状況に合わせて選択してください。

Q
冷却(アイスパック)だけでも効果はありますか?
A

はい。複数のRCTで、アイスパックはEMLA同等以上の穿刺痛軽減効果を示しています。即効性がありコストも低いため、エムラクリームが使えない場合の有力な代替です。

Q
エムラクリームでかぶれが出たらどうすればいいですか?
A

直ちに使用を中止してスタッフに報告してください。ペンレステープへの切り替えや冷却法を担当者と相談しましょう。

Q
G6PD欠損症でもエムラクリームは使えますか?
A

禁忌です。メトヘモグロビン血症のリスクがあります。必ず主治医に確認してください(添付文書 禁忌の項)。

Q

穿刺ミスの後、すぐに刺し直しをされるのが嫌なのですが。
A

「待ってほしい」と伝えてください。施設によっては、再塗布して麻酔が効いてから再穿刺する対応をとっています。


⚠️ 免責事項
本記事は情報提供を目的としており、特定の診断・治療の代替にはなりません。エムラクリームの使用・穿刺方法については、必ず担当医・看護師・臨床工学技士にご相談ください。


参考文献

  1. Fujimoto K et al. “Comparison of the pain-reducing effects of EMLA cream and of lidocaine tape during arteriovenous fistula puncture in patients undergoing hemodialysis: A multi-center, open-label, randomized crossover trial.” PLoS ONE 2020;15(3):e0230372. PMID 32210455
  2. Shaheen S et al. “Comparison of prilocaine/lidocaine cream with piroxicam gel for reducing pain during cannulation of arteriovenous fistula for adults undergoing haemodialysis: A randomized crossover clinical trial.” J Vasc Access 2023;25(4):1081-1086. PMID 36573703
  3. Al-Jubouri MB et al. “Using cryotherapy, EMLA (eutectic lidocaine/prilocaine) cream, or lidocaine spray to reduce pain during arteriovenous fistula puncture: A randomized controlled trial.” Hemodial Int 2024;28(3):270-277. PMID 38605472
  4. Çelik G et al. “Vapocoolant spray vs lidocaine/prilocaine cream for reducing the pain of venipuncture in hemodialysis patients: a randomized, placebo-controlled, crossover study.” Int J Med Sci 2011;8(7):623-7. PMID 22022215
  5. Kortobi L et al. “Management of pain at arteriovenous fistula puncture: Cryotherapy versus lidocaine/prilocaine.” Saudi J Kidney Dis Transpl 2020;31(3):597-603. PMID 32655046
  6. Pérez-Pérez LC et al. “Allergic contact dermatitis from EMLA cream in a hemodialyzed patient.” Dermatitis 2006;17(2):85-7. PMID 16956458(DOI未公開)
  7. エムラクリーム添付文書(アストラゼネカ株式会社)

執筆者プロフィール

臨床工学技士(国家資格)
登録年:平成15年(2003年)|登録番号:16,000番台
透析専従歴20年以上|担当症例1万件以上
北海道内急性期病院 透析室・急性期血液浄化担当

エコーガイド下穿刺・VA超音波評価も日常業務として実施。本記事は個人の見解を含みますが、PubMedに基づく情報提供を基本としています。


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