この記事は、透析療法に20年以上従事する臨床工学技士(CE)であり、一児の父である管理人が、現場の経験と2025年改訂の最新ガイドラインを元に執筆しています。
※本記事はプロモーションを含みます。記事内で紹介している商品は、私が成分や安全性を確認した上で選定していますが、購入や使用の際はご自身の体調に合わせてご判断ください。
検査結果で「リン(P)」や「副甲状腺ホルモン(PTH)」の数値が高いと指摘され、「骨が弱くなるの?」「血管が詰まるって本当?」と不安でお困りではありませんか?
専門用語が多くて難しく感じるかもしれませんが、ポイントさえ押さえれば決して怖いものではありません。
この記事では、「なぜCKD-MBD対策が必要なのか」という根本的な理由から、今日からできる「骨と血管を守る具体的な方法」まで、現場の視点でわかりやすく解説します。
⚠️【免責事項】本記事は情報提供を目的としており、診療行為・医学的アドバイスではありません。透析治療や食事制限に関する判断は、必ず主治医・管理栄養士の指示に従ってください。個人の状態により適切な対応は異なります。
CKD-MBD(骨・ミネラル代謝異常)とは?
まずは、この少し難しい名前の病態について解説します。CKD-MBDとは、「慢性腎臓病(CKD)に伴う、骨とミネラルの代謝異常(MBD)」のことです。
腎臓が悪くなると、体内のミネラルバランスや骨の代謝を調整できなくなります。具体的には、以下の3つの要素が複雑に絡み合って悪さをします。
- 異常なミネラル代謝(カルシウム、リンのバランス崩壊)
- 異常な骨代謝(骨がもろくなる、または硬くなりすぎる)
- 血管の石灰化(血管が石のように硬くなる)
リン・カルシウム・PTHの「シーソー」関係
透析患者さんの体の中では、常にシーソーのようなバランス調整が行われています。
- リン(P) が高くなると、カルシウム(Ca) が下がります
- カルシウムが下がると、それを補おうとして 副甲状腺ホルモン(PTH) がたくさん出ます
- PTHが出すぎると、骨からカルシウムを無理やり溶かし出し、骨がスカスカになります
この悪循環が続くと、溶け出したカルシウムとリンが血管にくっつき、動脈硬化を引き起こしてしまうのです。

パパ、英語がいっぱいで難しいよ…。骨が弱くなっちゃうの?

ごめんね。簡単に言うと、体の中の栄養バランスが崩れて、骨が弱くなったり、血管が硬くなったりしちゃうことなんだ。でも、ちゃんと調整すれば大丈夫だよ。
なぜCKD-MBDが重要なのか?「かゆみ」と「石灰化」
なぜ、医師や私たちスタッフは、口酸っぱく「リンを下げましょう」と言うのでしょうか。それは、患者さんの「生活の質」と「寿命」に直結するからです。
1. 日常生活を邪魔する「症状」
リンやPTHが高い状態が続くと、以下のような症状が出ることがあります。
- 強いかゆみ:皮膚の下にリンやカルシウムが沈着して起こると言われています
- 骨の痛み・関節痛
- イライラや不眠
2. 命に関わる「血管の石灰化」
もっとも怖いのは、自覚症状がないまま進行する「異所性石灰化(いしょせいせっかいか)」です。本来、骨にあるべきカルシウムが、心臓の血管や足の血管に沈着し、血管を石のように硬くしてしまいます。
日本透析医学会の最新統計(2024年末現在)によると、透析患者さんの死因は感染症(24.2%)が最多で、心不全(19.0%)、脳血管障害(5.1%)、心筋梗塞(3.2%)を合わせた心血管疾患は死因全体の約27%を占めています。血管を守ることは、長生きするために最も重要なミッションの一つです。

先生、かゆみがあるのはリンが高いせいなんですか?クリームを塗っても治らなくて…

その可能性は高いですね。リンが高いと、体の内側からかゆみが出ることがあります。塗り薬も大切ですが、まずは検査データを見て、リンの値をコントロールすることで、スッと楽になる患者さんも多いですよ。
【2025年改訂版】ガイドラインで見る治療のポイント
日本透析医学会の「慢性腎臓病に伴う骨・ミネラル代謝異常の診療ガイドライン 2025年改訂版」では、管理目標値が13年ぶりに見直されました。ただし、これはあくまで目安であり、年齢や全身状態によって主治医が個別に目標を設定します。
▼ 管理目標値の目安(透析前の血液検査)── 2025年改訂版
| 項目 | 2025年改訂版 目標値 | 旧目標値(参考) |
|---|---|---|
| リン(P) | 3.5以上、5.5未満 mg/dL | 3.5〜6.0 mg/dL |
| 補正カルシウム(Ca) | 8.4以上、9.5未満 mg/dL | 8.4〜10.0 mg/dL |
| intact PTH | 240 pg/mL未満(原則下限値なし) | 60〜240 pg/mL |
※出典:日本透析医学会『慢性腎臓病に伴う骨・ミネラル代謝異常の診療ガイドライン 2025年改訂版』
今回の改訂で特に大きな変化が、PTHの「下限値が原則なくなった」ことです。以前は「60 pg/mL以上」という下限があり、「PTHが低すぎると骨が固まりすぎる(低回転骨)」という考え方が強調されていました。しかし最新のデータ解析の結果、生命予後の観点からPTHを下げすぎることによるリスクは確認されなかったため、方針が変わりました。なお、活性型ビタミンD製剤のみで管理している場合は、従来通り60 pg/mL以上が目安となります。
また、CaとPの上限がそれぞれ10.0→9.5 mg/dL、6.0→5.5 mg/dLへと厳格化されました。これは動脈硬化リスクをより低く抑えるという方針の反映です。
以前は「とにかく数値を下げればいい」と考えられがちでしたが、最新の考え方では「下げすぎも良くない(栄養不足のリスク)」ことや、「数値の変動(トレンド)を見る」ことが重視されています。
薬だけじゃない!透析液にも「骨を守る」工夫がある
ここからは、私の専門分野である「機械と透析液」のお話です。
実は、CKD-MBDの治療は、飲み薬や食事制限だけで行っているわけではありません。透析液そのものにも、骨や血管を守るための工夫が組み込まれています。
透析液のカルシウム濃度とは?
透析液にはカルシウムが含まれており、その濃度によって体内のカルシウムバランスに影響を与えます。主に使われる濃度は以下の3段階です。
| Ca濃度 | 特徴・想定される使用場面 |
|---|---|
| 3.0 mEq/L | 低カルシウム血症の補正が必要なケース |
| 2.75 mEq/L | Ca収支がほぼニュートラル。標準的な選択肢 |
| 2.5 mEq/L | 高カルシウム血症、またはPTHが過剰に抑制されているケース(Ca負荷を軽減) |
この濃度の選択は「Caの数値だけ」で決まるわけではなく、PTHの値・ビタミンD製剤の使用状況・血管石灰化のリスクなども含めて医師が総合的に判断します。
実際の運用:多くの施設では「施設単位」で決定
ここで少し補足です。ドラマのように「この患者さんだけ濃度を変える」というケースは、実はそれほど多くありません。
多くの透析施設では、透析液は機械室で一括混合・供給するセントラル供給システムが採用されており、施設全体で同一濃度を使用しているのが一般的です。
患者さんごとの細かな調整は、主に薬(リン吸着薬・ビタミンD製剤・シナカルセトなど)で行うのが現実的な運用です。透析液の濃度変更は、施設の方針や設備の状況に応じて、必要と判断された場合に検討される選択肢の一つと考えていただくのが正確です。
透析時間と「リン除去」の関係
もう一つ、あまり知られていないポイントが透析時間とリン除去効率の関係です。
リンは透析中にゆっくりしか抜けない性質があるため、透析時間を延長することで1回あたりの除去量を増やせる場合があります。薬で補いきれない部分を「時間」でカバーするという発想です。
トータルで管理するのが現代のCKD-MBD治療
| 管理の柱 | 内容 |
|---|---|
| 🥢 食事 | 無機リンを含む加工食品・添加物を控える |
| 💊 薬 | リン吸着薬を食直前・食直後に正しく服用 |
| 💧 透析液 | 施設の方針のもと、Ca濃度を適切に設定 |
| ⏱ 透析時間 | 延長によるリン除去量の増加 |
これら4つを組み合わせて管理するのが、現代のCKD-MBD治療の考え方です。

へぇ〜!透析の液にも種類があるなんて知りませんでした。

そうなんです。見た目はどれも同じ透明な液体ですが、じつは骨と血管を守るための設計がされているんですよ。薬・食事・透析液・透析時間、これら全部をチームで管理しています。安心して任せてくださいね。
今日からできる対策|食事と薬の付き合い方
最後に、患者さん自身ができる対策についてお話しします。無理なく続けることが何より大切です。
1. 「リン」の種類を意識する
リンには「有機リン(植物性・動物性)」と「無機リン(食品添加物)」があります。特に注意が必要なのは、ハムやソーセージ、インスタント食品に含まれる「無機リン」です。これらは体への吸収率が非常に高く(90%以上)、数値が一気に上がりやすい特徴があります。
| リンの種類 | 主な食品 | 体への吸収率 |
|---|---|---|
| 無機リン(食品添加物) | ハム・ソーセージ・インスタント食品・だしの素 | 90%以上 |
| 有機リン(動物性) | 肉・魚・卵・乳製品 | 約40〜60% |
| 有機リン(植物性) | 豆類・穀物・野菜 | 約20〜40% |
アドバイス: 加工食品を少し減らし、新鮮な肉や魚、野菜を中心にするだけで、リンの摂取量を自然に抑えられます。
とはいえ、「毎日手作りなんて無理!」「たまには楽をしたい」というのが本音ですよね(私も子育て中なので、料理の大変さは痛いほどわかります…)。
そんな時に私が患者さんや家族におすすめしているのが、「無塩・無添加のだし」の活用です。スーパーで売っている安価な「だしの素」は無機リンが多いことがありますが、素材100%の出汁パックに変えるだけで、リンを大幅にカットしながら、料亭のような味が出せます。
▼ 私が自宅でも使っている「化学調味料・食塩無添加」の出汁
※「無添加」を選ぶのがポイントです。料理を作るご家族の負担も減らせますし、何より「美味しい」ので食事が楽しくなりますよ。
2. リン吸着薬は「食事の直後」に
処方される「リン吸着薬」は、食事に含まれるリンと胃の中で結びつき、便として排出させる薬です。そのため、胃の中に食べ物がある状態(食直後)に飲まないと効果が発揮されません。
飲み忘れ防止: 食卓に薬を置いておく、ピルケースを活用するなど工夫してみましょう。
⚠️ 薬の種類によって飲むタイミングが異なる場合があります(例:炭酸ランタンは食直後、セベラマーも食直後が基本)。必ず処方された薬の用法・用量に従い、不明点は主治医・薬剤師にご確認ください。
3. 乾燥肌対策(スキンケア)
かゆみ対策として、リンの管理と同時に「保湿」も非常に重要です。透析患者さんは汗をかきにくく肌が乾燥しやすいため、全身の保湿ケアを習慣にしましょう。
処方薬(ヒルドイド等)は非常に優秀ですが、「ベタつきが苦手で塗りたくない」という男性患者さんの声をよく聞きます。でも、塗らなければ意味がありません。
もし処方薬のベタつきが苦手なら、市販の「敏感肌用・高保湿ローション」を併用するのも一つの手です(※使用の際は主治医に確認してくださいね)。現場で肌が綺麗な患者さんに「何使ってるの?」と聞くと、赤ちゃんや敏感肌用の優しいものを使っていることが多いですね。
▼ ベタつかず、男性でも使いやすい保湿ローション
※お風呂上がりの5分以内が勝負です!安いものでも良いので「たっぷり」塗ってください。
まとめ:正しい知識で「骨」と「血管」を守ろう
CKD-MBDは、放置すると怖い病態ですが、適切に管理すれば怖がる必要はありません。
- CKD-MBDは、骨だけでなく「血管」を守るために管理する
- リン・カルシウム・PTHのバランスが重要で、2025年改訂版では目標値が厳格化・個別化された
- 薬や食事だけでなく、透析液の調整・透析時間の確保も治療の一部
- 加工食品(無機リン)に注意し、薬はタイミングよく飲む
私たち医療スタッフは、20年、30年先もあなたが元気に歩き、ご家族と笑って過ごせることを目標に治療をサポートしています。
もし検査データで気になることがあれば、次回の回診で「今の私の骨や血管の状態はどうですか?」と、ぜひ主治医や私たちスタッフに聞いてみてくださいね。


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